2025年12月02日
【story】NPOや地域の活性化につながる伴走支援とは?地域協創事業スタッフが語る、そのリアルとやりがい
「地域協創事業」では実際にどのようなことを行っているのか、またその魅力について、事業を担当しているスタッフにマネージャーも加わり、語り合いました。

<スタッフ紹介>
杉原 志保/協創プラットフォームづくり支援部門(地域協創事業)マネージャー(写真右):大学院時代は議員と連携し政策提言を行う。またフリーランスで全国の自治体の調査や行動計画策定を行う。その後川崎市役所入庁、行動計画策定や評価設計に携わる。かわさき市民活動センターで助成事業などを経て2014年から現職。
小川 絢子(写真中央):学生時代に環境NGOに参加。卒業後は自然保護団体に10年間勤めNPO・行政の協働事業サポート、助成金事務局を経験。その後、公設の市民交流施設で協働コーディネーター、社会福祉協議会で民生委員・児童委員向け研修の運営、並行して教育NPOでのペアレントメンター活動を経て、2024年入職。
森泉 菜穂子(写真左):新卒でイベント制作会社に入社。BtoC企業を顧客に、消費者向けプロモーション事業の企画・制作・運営を行い、新規プロモーションの立ち上げや海外サロン制作、企業のインナーブランディング事業の企画・制作を経験。同時に、地域創生を目的とした市民団体の広報にプロボノとして参加。2021年入職。
ーー現在、どのような事業に取り組んでいるか、自治体ごとに紹介してください。
森泉 私は東京都中央区から委託を受け運営している「協働ステーション中央」という施設の事業を担当しています。団体の運営力を高める取り組みをしながら、自治体や企業、団体同士の協働をマッチングしています。
人やお金が足りない、活動を広げたいといった相談を受けてアドバイスやフォローアップをしたり、具体的な組織運営や事業づくりなどのノウハウを学ぶ講座を企画したり、自治体などとの協働を促していく、そんなことをしています。

協働ステーション中央、交流イベントの様子
小川 私が主に担当する品川区では、施設運営を通した支援ではなく、事業ベースで区内の団体の支援に携わっています。
区の助成金に申請する団体向けのセミナーや事前相談の他に、活動での悩みをお聞きする相談日が毎月定例で設けられています。市民活動団体向けの講座も企画・運営しています。
杉原 横浜市は少しパターンが違っています。市民活動支援や協働を推進する施設のことを「中間支援拠点」と呼んだりしますが、いろいろな自治体から運営力などの支援機能強化のご相談を受けるようになり、協働ステーション中央の運営実績を踏まえて、2024年度から横浜市と18の各区支援センターの支援力強化の事業を始めました。
区の職員研修をしたり、各区の職員とセンター職員とが一緒になって支援センターのモデルチェンジや支援力を高める伴走支援ワークショップをしたりしています。
すべてに共通しているのは、団体の力をつけて地域を活性化することや、連携・協働して地域課題を解決できる力を高める、そのお手伝いを自治体と一緒にやっている、というところでしょうか。
小川 私たちが「地域活性化」という時、観光によるような地域活性ではなく、課題を解決できる力=「地域力」が向上することと捉えるところが特徴的だと思います。
森泉 格差の拡大や地域の課題が多様化している中で、誰もがお金を払って企業のサービスを受けられるわけではないし、地域に手を差し伸べてくれる市民団体があることはすごく大事で、団体支援の大切さを感じています。
ーーそれぞれの事業で具体的にどんな伴走支援をしていますか。
森泉 私は、産業振興のための公共施設と、子どもたちの探求学習をミッションにしている団体と協働で、商店街に賑わいを取り戻すプロジェクトに伴走しました。
施設は認知度を高めたいと考えていました。団体は子どもたちに企業の商品開発を体験するプログラムを提供していましたが、地域課題解決を探求する機会を探していた。
そこで、公共の見方も市民活動団体のことも分かる私たちが間に入ってマッチングし、地域の商店街の賑わい創出に取り組むことになりました。両者で実現したいビジョンを共有し、事業内容を議論しながら、公共施設と団体とが協働する新しいパターンができたと思います。
杉原 協働ステーション中央という「地域課題解決ラボ」があるからこそ、そういういろんな「試し」ができるんですよね。
単純に「(そのテーマなら)こんな団体ありますよ、こんな人いますよ」と紹介するだけではなくて、団体の間に私たちが入って取り組み意義の理解を得ながら一緒に活動を起こして広げていく。最近はそういう事例が増えました。
品川区、毎月定例の相談の様子
小川 品川区は、事業相談の日取りが決まっているので、団体が一度相談に来てサポートが終わりにならないように工夫しています。
相談後、関連する講座に参加してもらってワークシートを書きながら団体のビジョンを整理したり、団体交流会に参加してもらったらその場で別の団体とつないだりするなど、事業相談、講座、交流会など一つ一つの事業を一貫して活用してもらえるよう意識します。
点を線にするように対話を続けることで、団体活動がより成長できるように支援します。
助成金をきっかけに相談にきた団体、個人を助成金以外のところでも複層的につなげて面にしていくことにも取り組んでいます。
ある団体は、元々は学校でプログラミングなどを子どもたちに教えるお父さんたちのボランティア活動でした。事業相談の中で、不登校やひきこもりの若者支援をする団体とおつなぎしたところ、若者たちのITスキルを上げる人材育成につながったと同時に、そのスキルを使って、例えば他の団体のオンライン配信を支援するなど、地域のIT課題をサポートする社会参加のプログラムもできました。
杉原 品川区は助成金採択団体同士の交流を促し、密なつながりがありますよね。支え合って新たな事業を生んだりしていて、いい傾向です。
団体が力をつけるだけでなく、そうした団体が活躍できる環境もあわせて地域につくらないと。行政はそのための制度や仕組みを作っているのだと思います。
例えば、助成金制度を使いやすくするために、団体と意見を出し合い一緒に考えたりすることも私たちの大事な役割です。

ーー地域協創の仕事に、これまでの経験がどういかされていますか?
森泉 私はもともとイベント制作会社でプロデューサーの仕事をしていました。誰をそのプロジェクトに充てるか、何をゴールにするかを考えて、提案していく仕事でした。
実はNPOサポートセンターに入職するまで、中間支援の仕事は全く知らなかったのですが、代表理事の松本が「中間支援の仕事は、コンサルタントであり、コーディネーターであり、プロデューサーである」と話しているように、前職に近いものがあることがわかります。「異なる人同士で何ができるか」といったことを提案していくところは、協働事業を行う際のマッチングに活かせているかなと思います。
小川 私は環境分野の非営利団体で働いていたことがあり、環境問題の特徴を「一人では解決できない問題」と捉えていました。それをどう解決していくか、プロセスを考えるのが重要であり魅力的で、今の仕事の「共通の課題をどう協力して解決するか」という点にも通じていると思っています。
また、福祉分野全般を対象とする社会福祉協議会で職員をしていたことから、社会福祉士の資格も取りました。今、地域課題というと福祉のテーマが頻発していて、その内容が分かるという意味では経験がいきています。
ただ、今の仕事と福祉現場の仕事との大きな違いは、助けを必要とする人の個別支援ではないという点です。支援者を支援する。また、(支援対象の)団体がより良く活動できる制度・環境を自治体とつくる、面的に福祉課題にアプローチする点だと思っています。
ーーこの仕事のやりがいや難しさは何でしょうか。
森泉 異なる組織同士をマッチングする際、「(お互いに)こういうふうに考えれば、団体が、そして地域が、より良くなるのでは」と、将来を見据えた共通の目標に向かって提案し、理解してもらうことが一番難しくて。それぞれの利害をきちんと聞き取り、認識したうえでマッチングしていくわけですが、どうしても、どちらか一方のやりたいことに、もう一方が協力する体制になってしまいがちです。
でも「地域がより良くなる」ということをめざした時に、二者の協力のかたちではなく、他の組織からの支援も得られないかをいかに創造して提案できるか。面白いところでもあり、まだまだ知識や経験が必要なところだと思っています。
小川 地域協創事業では、新しいアイデアを考える機会は多分にあるので、私は決まったことをやり続けるよりも、魅力があると思っています。
今は社会の変化、時代の変化が激しく、地域によって違いも大きい。NPOはその変化に直面しているので、(課題解決に向けて)何をめざすかが常に変わり得るし、何が「正解」かが見えにくい。そこが難しさであり、エキサイティングでもあると思っています。
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NPOサポートセンターでは、地域協創事業のスタッフを募集しています。
▼募集要項、詳細はこちらから(締切:2026年1月12日まで)
https://npo-sc.org/main/news/career202510/#session
▼スタッフ質問&オフィス見学会の開催(要申込み)
地域協創事業のスタッフが事業内容や具体的な仕事内容、働き方など、採用に関する疑問・質問にざっくばらんに答えます。第1回・第3回では職場見学会も同時に行います。募集要項ページに掲載の「オンライン採用説明会」動画を視聴してのご参加を推奨します。
【日時】
・第1回:11月26日(水) 19:00-20:00
・第2回:12月8日(月) 19:00-20:00
・第3回:12月13日(土) 11:00-12:00
【場所】
・第1回、第3回:協働ステーション中央(中央区日本橋小伝馬町5-1十思スクエア2F、東京メトロ日比谷線「小伝馬町駅」徒歩4分)
地図:https://kyodo-station.jp/access
・第2回:オンライン開催(zoom)
【定員】先着15名(各回)