有名なNPO、NGOの取組みや、マーケティングに強い企業からの転職者が増えて、「NPOマーケティング」が盛り上がっている。書籍の出版、全国のセミナー開催が後押ししたことも追い風となった。

　一方で、マーケティングの業務経験がなく、団体内にノウハウもないNPOはどう始めれば良いのだろうと悩む声がある。あらゆるNPOが「マーケティングを実践し」はじめた時、本当に広く普及したことになるだろう。このページは、実際に「はじめてマーケティングを実践した」方々をゲストに迎え、60分間の動画を集めた。NPOサポートセンターが主催する「NPOマーケティングプログラム」参加団体に成果を発表いただいた。

 
　ある日プレーパークせたがやの会議室では、次年度の資金調達の議論が続けられていた。助成金依存脱却をめぐった自主事業構築が主なテーマだ。NPOの現場のノウハウをパッケージ化して販売できるのではないか。開催するセミナー参加を入口に、仲間を集め、新規案件獲得が実現した。

✓ 顧客を仲間として巻き込み、一緒にサービス開発する。
✓ これまでは強みを押し売りをしてきたと振り返ることができる。
✓ マーケティングの極意である『ニーズ把握』を体感。
NPO法人プレーパークせたがや「ゼロから始める法人営業の秘訣」より

 
　万策尽きた。日本で唯一の不登校・ひきこもりの専門紙『Fonte』（現『不登校新聞』）は、発行部数の「右肩下がり」を止められないでいた。がむしゃらに、すべての施策をやりつくしたと思われたが、顧客管理担当が読者分析を始めた。残り3ヶ月で、目標購読部数の採算ラインに到達した復活劇と、事業転換（モデルチェンジ）がはじまった。

✓ 廃業寸前に現状分析。
✓ 仮説構築、効果測定、小さなPDCAを何度も実践。
✓ 継続的に成長をし、休刊危機の頃から現在は3倍の販売数に。
NPO法人全国不登校新聞社「NPOの事業立て直しと収益改善方法」より

 
　「野菜セット定期便」の営業担当の高野は、副代表に販売数増加を告げられる。その目標数値は普段の営業活動では届かない数字であった。障がいのあるスタッフたちと野菜を作り、「障がいのある人たちとごきげんな社会をつくる」というミッションに共感した購入者――お得意様、退会者、スーパー来店者――との対話と、商品開発が始まった。

✓「御用聞き」ではなく「顧客課題」を深掘りすることの重要性を実感。
✓「販売促進」よりも「商品価値」を見直すことが大事であることに気付く。
✓ 500件から840件に受注増加！地元に愛され、NPOとして大切にしたい販売戦略とは。
認定NPO法人 つくばアグリチャレンジ「既存商品の売上げがアップする実践法」より

 
　医師である代表の現地活動をもっと増やしたい。現地活動と資金集めの両方を行う、代表のカリスマ性で成り立っている現状を改善したい。有志で集まった団体メンバーは、これまでの支援者と密な時間を過ごし、組織としての寄付獲得戦略の再検討を始めた。

✓ 既存寄付者の理解が、新規寄付者アプローチの第一歩だ。
✓ 顧客インタビューを通じて団体の「競争力」を明確に再定義できた。
✓ 支援者、顧客への思い込みをいかに払拭できるかが重要。
NPO法人ミャンマーファミリークリニックと菜園の会「ゼロから始める寄付獲得戦略の立案」より

 
　「終わらない実験」と「顧客との対話」、そして「（わたしが）顧客と一緒に、成長するNPOになる」――それが紹介した事例の共通点であり、本プログラムのゴールである。マーケティング、事業開発のジャンルを踏まえると、本プログラムはスティーブ・ブランクの「顧客開発モデル」と、エリック・リースが提唱したリーン・スタートアップの影響下にある。「NPOマーケティングプログラム」は、マーケティングの机上論でおわらず、身体を動かし実践して身につける、スポーツに近いトレーニングにより、主体的な参加者に成果が約束されるだろう。

【エントリー締切：6月16日(金)】NPOマーケティングプログラム2017 参加団体募集

NPOマーケティングプログラムは、マーケティング研修と個別支援で4ヶ月間、徹底的に「サービス・商品開発」に取組むプログラムです。活動の持続的な発展と組織の自己変革に挑戦する非営利団体を募集します。下記URLから詳細をぜひご覧ください。
https://npo-sc.org/main/event/markethon2017s/