2019年3月2日、協働ステーション中央にて「教育NPOの仕事・働き方の接点をつくる『ソーシャルキャリアのはじめ方ゼミ』」の第2回が開催されました。

全3回の開催の中で、実際に教育NPOに携わるスタッフの話を聞くことや、同じ志を持つ仲間との出会いを通してひとりひとりのキャリアの描くことを目的とする本ゼミですが、第2回のテーマは、「ここでしか聞けない教育系NPOのリアル」です。

教育系NPOで働く4人のスタッフを招いて、ゼミの後半では「ここでしか聞けない」ぶっちゃけたお話を伺いました。ゼミの前半のお話をまとめた記事にありますのでそちらもぜひご覧ください。

このゼミの連載記事
NPOから社会を作る – ソーシャルキャリアのはじめ方ゼミ「ここでしか聞けない教育系NPOのリアル」

モデレーター
岩切準氏(特定非営利活動法人夢職人 理事長、チャンス・フォー・チルドレン 理事、全国検定振興機構 理事)
ゲスト
・菊地麻子氏(認定NPO法人カタリバ 経営管理本部 人事チーム フェロー)
・松本沙織氏(株式会社キズキ 人事担当)
・夏秋賢氏(NPO法人ケンパ・ラーニングコミュニティ協会 保育士、一般社団法人カドリー・コアラズ 代表理事)

NPOはいいぞ

岩切準氏(以下、岩切) : 本日のモデレーターを務めます岩切です。お願いします。まずは、以前勤めていた企業との違いについて伺います。

菊地麻子氏(以下、菊地) : 前に働いていた企業との規模やフェーズの違いもあると思いますが、NPOはベンチャーに近いと思います。スピードとアイデアでどんどん物事を進めていくスピード感があります。

昨年7月の西日本豪雨の時は3,4日後には現地に入り、ヒアリングをして、8月には現地の自治体等とパートナーシップ協定を結んでいました。

松本沙織氏(以下、松本) : キズキは株式会社とNPOの二つの形態を取っているのですが、両方のおいしいところ取りをしている印象があります。利益が出せることは株式会社、一般の企業が入りづらいことはNPOの看板で行っています。会社の中にNPOが存在している感覚には企業との違いを感じます。

夏秋賢氏(以下、夏秋) : 民間の保育所では、保育料での収益について考えなくてはなりませんでした。しかしNPOでは仲間と集まって1つの社会的目標に向かって、収益をあまり気にせず働くことができます。それが最大の違いだと思います。

岩切 : ありがとうございます。いろいろなお話が出ましたが、圧倒的に違うのは「ポジション」ですね。企業とは違い、NPOは「競合」ではなく「協働」することが多いです。企業と似ているところもありますが、スピード感とつながり方が違います。

遠い存在?

岩切 : NPOに興味はあるけど、実際足を踏み入れることに不安を感じている方が多いと思います。みなさんの今の仕事に就く前の不安と、行動に起こしたきっかけはなんですか。

菊地 : 不安はあまりありませんでした。もともとキャリア関係の仕事を探していて、調べていた時にカタリバを見つけました。「探していたのはこれだ!」と感じ、勢いで飛び込みました。面接で会った方たちがとても話しやすく、本音を話すことができたのも安心しました。

並行して行ってみたボランティア説明会では、運営しているインターン生が生き生きしていたのも印象的でした。

松本 : キズキを知った時、ミッションに強く共感はしましたが、すぐに支援の世界に飛び込む勇気はありませんでした。教室運営の事務として募集が出ていたので応募することができましたが、最初から支援職と言われていたら踏み出せなかったかもしれません。バイトやボランティアから徐々にこの世界に入るのもよい手だと思います。

夏秋 : ケンパ・ラーニングコミュニティ協会自体はもともと知っていました。とても興味がある団体でした。そのため不安を感じることはなく、NPOであると意識したのは実際入ってみた後でした。

岩切 : ありがとうございます。

我こそ開拓者

岩切 : では逆に、入った後に見つけたやりがいや、マイナスの意味で驚いたことがあればお伺いしたいです。

菊地 : 私は子どもたちに直接触れる機会は少ない部署ですが、年に一度の「全社会議」などで他部署のメンバーと交流する機会も多くあるおかげで現場の支えになっていると実感できますし、高校生の時に出張授業「カタリ場」を受けたことがあるという方や、被災地の放課後学校の卒業生がインターンに応募してくれたときは嬉しかったです。

仕事が大変な時にも、自分がやっている仕事が作りたい社会やより良い未来につながっているのだと感じられるので頑張ることができます。

マイナスに驚いたことはそんなにありませんが、整っていないことが多いなとは感じました。企業では当たり前にあった人事制度なども、私の入社当時は整っていませんでしたないからこそゼロから意見を寄せて作っていくことができるのはいいところではありますが、大変でもあります。

松本 : 菊地さんのお話にすごく共感しています。やりがいとしては、様々な事情を抱えた子どもたちが、大学進学をしたり普通にコミュニケーションが取れるようになったのを見ると、感慨深いです。いい仕事だなと思います。また、同じ志を持ったスタッフと働くことは自分の財産になります。

一方マイナスな面では、もっとキズキが小さかったころから徐々に大きくなっていったので、異動が発生して勤務地が変わったり人が増えたり、予想外の変化に驚きました。

菊地さんも話されていたように、基本的なシステムも1から考えて、規模に合わせた組織の仕組みづくりを方々に問い合わせてなんとか作っていっています。

夏秋 : お2人も話されていた通り、まだ組織として進め途中な部分があるのですが、その分いろんな発見があって楽しいです。いろいろ提案して採用してもらえる分、責任が重いのは大変ですが、やりがいはあるのでやっぱりおもしろいです。

岩切 : ありがとうございます。今日来ている団体は、NPOの中ではまだ大きい方の団体です。団体を選ぶときに規模は大事な観点です。

お話に出ていた、あるべきものがないことはNPOではよくありますが、規模が小さければ小さいほどないものが多く、仕事の守備範囲が広くなります。

仕事の守備範囲が広いことは大変ですが、だからこそできることもあります。目指しているやりたいことによって規模についてはよく考えたほうがいいです。

お給料ってどうなの?!

岩切 : ここからは受講者の皆さんから質疑を受けたいと思います。質問のある方はいらっしゃいますか。

質問者 : 金銭面の部分が気になっています。非営利組織として運営している中で、生活していくことができるのか、副業をしている方が多いのかなどお聞きしたいです。

菊地 : 私を含めてカタリバの多くの職員は専業でやっています。生活のために兼業している人はいないと思います。

半年に一度人事考課を行って昇給を決める人事制度もあり、給与水準でいうと、中小企業並みにはなってきました。退職金の制度などはありませんが、そもそも定年まで働こうと思って入社してくる人は少ないですね。

私たちは面接で「カタリバで働くことをご自身のキャリアのなかでどう考えていますか」と聞くようにしているんですけど、それは自分の実現したいことを叶える場としてカタリバに入ってきてもらいたいという思いがあるからです。むしろそれが達成できたら卒業していく形でもいいと思っています。

松本 : キズキは基本的に株式会社から出ています。給与水準は一般企業とさほど変わりません。

夏秋 : ケンパ・ラーニングコミュニティ協会は、業界の中ではいい方の給与水準です。退職制度も整備されています。

岩切 : ありがとうございます。給与に関しては、それこそ規模によるところが大きいです。入る前に確認したほうがいいと思います。団体として、若いところや小さいところは不安定なところが多いです。

やるっきゃない!

質問者 : 最初にぶつかった壁、乗り越えたエピソードと、自分ができることの見つけ方を教えてください。

菊地 : 入社して最初に担当した仕事で一緒にやっていた方が、私が入社して半年くらいで辞めることになり、まだ業務にも慣れない時期だったので大変でした。

後任を採用することになったのですが、そのころは採用担当の部署もなかったので、入社したばかりなのに面接も担当しました。

できることの見つけ方は、やるしかないです!「できない」と言っていてもどうにもならないので、上司や同僚、社外で協力してくれる方を探して相談しながら、どうにかしてできることを見つけるしかないです。

質問者 : 最小規模なNPOで、広範囲の仕事をしなければいけないスキルをどう身に着けていけばいいのでしょうか。

岩切 : 周りの人に頼ることが大事です。団体内外に関わらず、分からないことは誰かに聞いた方がいいです。団体の代表は特につながりが多いので、紹介してもらうこともできます。

できないことや分からないことがあるのは当たり前なので、分からないことを明確に伝えられると良いです。

今日みたいにゼミに出席するなどしてつながりを作ることも役立ちます。人とのつながりが非常に重要なので、人とつながることや楽しいことが好きな人に向いている仕事かもしれません。

(会場拍手)


なかなか聞くことができないNPOの舞台裏について、4人のゲストが語ってくださいました。

受講者の皆さんは聞き終えた後、自身が教育系NPOに関わっていく具体的なイメージが見えてきたようでした。

今回ゼミを主宰しているNPOサポートセンターのソーシャルキャリアのはじめ方ゼミは、働き方に関するセミナーの情報や説明会等に関する情報を無料で配信しております。ご希望の方は、こちらのフォームからぜひご登録ください。

NPOキャリアカレッジ 情報配信お申込みフォーム : https://ssl.form-mailer.jp/fms/af1ff366263024

NPO・ソーシャルセクターで働いている方へ

自分とチームと社会がつながる、
ソーシャルセクターの仕事観をみがく「若手スタッフ研修」

 

 

 

 

 

NPOやソーシャルセクターで働くスタッフの中には、仕事にやりがいを持ちつつも、キャリアに不安を感じている人が多いのではないでしょうか。

少人数で常に忙しく、整理されたキャリアパスが少ないなかで、他のセクターで働く同世代と、悩みを共有できないもどかしさを感じている方もいらっしゃると思います。

一方で、COVID-19で社会情勢が不安定になるとともに、わたしたちは、働き方や生き方の価値観を迫られています。
・どうしたら組織のなかで自分の役割を活かし、社会により貢献できるのか。
・自身が伸ばしていくスキルやマインド、成長のポイントはどこか。
・変化を乗り越えることができるチームワークと行動力がほしい。

本ゼミでは、組織も巻き込んで、自分自身のキャリアを磨き、実行していけるよう、その”基幹力”となる考え方を身につけます。

✔️団体での3-5年後を見据えた自分のキャリアを考えたい方
✔️日々の業務に追われて、面談やフィードバックの機会が少ない方
✔️団体で長く働きたい / 長く働いてほしいけれど、具体的な活躍のイメージがまだつかめない方
にもおすすめです。

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■開催概要:
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<開催日時>
[第1回]11月25日(水)14:00-17:00
[第2回]12月10日(木)14:00-17:00

<講師>
田畑浩(株式会社パーソナルヴィジョン研究所 代表取締役)

<定員>
・Zoom受講 : 25名
・聴講生 : 100名

<受講料 : 2回セット料金>
・料金プランA(Zoom受講) : 10,000円 / 1人
・料金プランB(聴講生) : 5,000円 / 1人(オンライン参加のみ)

<対象>
・NPO/ソーシャルセクターでのスタッフ経験が5年以内の方
・上司やマネージャーとの面談、フィードバックをもらう機会が少ないと感じている方
・団体で働くうえでの自分の強みや弱み、モチベーションなどが把握できないと感じている方

▼お申込み、詳細はこちらから
https://npo-sc.org/training/good-business-studio/curriculum/20113/

お問合わせ:NPOサポートセンター(佐藤)
TEL:03-6453-7498 / E-Mail:gbs@npo-sc.org