2019年3月2日、協働ステーション中央にて「教育NPOの仕事・働き方の接点をつくる『ソーシャルキャリアのはじめ方ゼミ』」の第2回が開催されました。

全3回の開催の中で、実際に教育NPOに携わるスタッフの話を聞くことや、同じ志を持つ仲間との出会いを通してひとりひとりのキャリアの描くことを目的とする本ゼミですが、第2回のテーマは、「ここでしか聞けない教育系NPOのリアル」です。

教育系NPOで働く4人のスタッフをゲストに招いて、NPOで働くことに関してひとりずつお話を伺いました。

モデレーター
岩切準氏(特定非営利活動法人夢職人 理事長、チャンス・フォー・チルドレン 理事、全国検定振興機構 理事)
ゲスト
・菊地麻子氏(認定NPO法人カタリバ 経営管理本部 人事チーム フェロー)
・松本沙織氏(株式会社キズキ 人事担当)
・夏秋賢氏(NPO法人ケンパ・ラーニングコミュニティ協会 保育士、一般社団法人カドリー・コアラズ 代表理事)

岩切準氏 : NPO法人夢職人の理事長をしている岩切です。私が様々な活動の目標としているのは「社会総がかりで子どもや若者の成長を支えること」です。

教育業界で長年問われ続ける、「教育を担うのは家庭や学校だけでいいのか」という課題に答えるため、新たな事業や仕組みを生み出して提供し続けています。

本日はモデレーターを務めさせていただきます。よろしくお願いします。

NPO法人カタリバが目指す教育活動

菊地麻子氏 : 認定NPO法人カタリバの経営管理本部人事チームでフェローをしています菊地です。

NPO法人カタリバは、「どんな環境に生まれ育っても未来をつくりだす力を育める社会」を目指し、日本国内の10代の子どもたちが、変化する社会の中で生き抜くための「意欲」と「創造性」を育む教育活動を行っています。

活動内容は3つに分けることができます。

1つ目は、プログラムの提供です。キャリア学習のプログラムや教育プログラムを開発して届けています。

2つ目は、居場所づくりです。主に中高生を対象とした居場所型の施設で通ってくる子供たちとコミュニケーションを取っています。

3つ目は、地域や学校での教育環境づくりのサポートです。高校や教育委員会に職員が駐在する形で活動しています。

被災地、過疎地域、首都圏など全国8箇所で地域の課題に合わせた拠点を運営したり、自分たちで直接届けるだけではなく地域の団体とコラボレーションすることで、全国に活動地域を広げています。

印刷会社の営業職からカタリバに転職

私は2013年にカタリバに入りましたが、その前は印刷会社で8年間営業をしていました。そのときはカタリバやNPOのことは全く知らず、転職活動のときに初めて知りました。

前に働いていた会社では男性社員の割合が圧倒的に多く、身近にロールモデルがいない環境の中でこの先のキャリアについて不安を持つようになりました。周りの女性社員でも同じように感じている人が多かったこともあって、社内で女性活躍支援のプロジェクトを始めたんです。

営業の仕事自体にも、このままで良いのか迷いを感じるようになっていたこともあり、人のキャリアを支援することを自分の仕事にしたいと思うようになりました。

私自身が、働き始める前の若いころにキャリアについて考える機会があったら良かっと感じていたため、子どもや学生に対してキャリア教育をしている転職先を探し、カタリバを見つけました。

株式会社やNPOといった法人形態にはこだわっておらず、ここで働きたい、と思ったカタリバが、たまたまNPO法人だったという感じです。

カタリバは一緒に働きたい人を全国で募集中

カタリバでは、最初は広報・ファンドレイジング部という部署に3年半所属しました。現在所属している採用部署は、2017年に立ち上げたときに担当になりました。カタリバの職員の大半は教育現場で働いていますが、私の仕事はそういう人たちをバックオフィスから支えることです。

具体的な仕事内容は職員とインターン生の採用と研修で、職員は年間約20人、インターン生は年間約10名採用しています。

カタリバは、その人なりのビジョンが心から達成したいこと、つまり「マイプロジェクト」を持っていて、それを実現させる手段としてカタリバの事業が一致する方と一緒に働きたいと考えています。そういう人は向上心を持って意欲的に仕事に取組んで、自分自身も組織も進化させられるからです。

また、正解のないことにチャレンジしつづけられることも重要です。NPOが取り組んでいる事業は答えがない。誰も解決したことのない課題だったり、何が課題なのかすらわからなかったりするなかで、何をどう解決していくのかを考えられる人ですね。

NPOは企業と違って寄付、補助金、委託金など様々な資金源、インターンやボランティア、あるいは外部のパートナーと連携するなど様々な人的リソースを組み合わせて事業を行っています。そのため対話力や解決策を考えるためのクリエイティビティを発揮することも必要です。

NPOという民間の立場だからこそのスピードやアイデアを駆使して新しい未来を作っていける方を、全国各地の拠点で募集しています。

キズキは困難を抱える人たちへ多角的に支援を展開

松本沙織氏 : 株式会社キズキで人事を担当しています松本です。キズキは、創業者の安田祐輔氏の原体験をもとに、「何度でもやり直せる社会をつくる」というミッションを掲げて作られました。

安田は、自らの複雑なキャリアを経て、既定路線から外れた人でも自己肯定感をもって歩んでいけるような社会に変えていきたいと考えてキズキを立ち上げました。

キズキという名前の由来は、「自分の可能性に気づく」「自分の将来を築いていく」という願いに由来します。

発足当初はNPO法人でしたが、現在は株式会社とNPOの両方の法人形態を取っています。受益者負担でできる活動は株式会社、そうではなく寄付を中心に行う福祉的な活動はNPO法人として行います。

この特徴を生かして、困難を抱える人たちへの多角的な支援を展開しています。

株式会社の形態での活動は、主に4つにわけることができます。

1つ目は、学習教室事業です。若者の学び直しの支援として、「キズキ共育塾」を運営しています。生徒は大学進学を目的に通っている人がほとんどで、平均年齢は20歳くらいです。校舎は現在、首都圏に4校舎、大阪に1校舎ありますが、今後首都圏や名古屋などの地域に新たに4校舎立ち上げる計画があります。

2つ目は中退予防事業です。大学進学率と並行して高まっている大学退学率の減少を目的としています。大学での基礎学力をつける授業のサポートや、教職員向けの学生のケアの研修などを行っています。

3つ目は行政委託事業です。行政が提供しているサービスを委託され運営しています。その内容は、生活保護世帯の子どもの学習支援のための家庭教師の派遣や、無料塾の運営などがあります。

4つ目は、ビジネスカレッジ事業です。うつ病や発達障害などで働くことに困難を抱えている若者向けの就労移行支援を行います。

NPOの形態での活動は主に3つに分けることができます。

1つ目は渋谷区と共同で行うスタディクーポン事業です。塾代などに利用できるスタディクーポンを、低所得世帯の中学生に配布しています。資金はクラウドファンディングで集めました。塾は登録してある中から選ぶことができます。2018年度の1年間の成果が認められ、来年度からは正式な制度として渋谷区に取り入れられます。

2つ目は少年院事業です。認定NPO法人「育て上げネット」と共同で活動しています。少年院を出所した若者の高卒認定試験の受験対策講座を行っています。

3つ目は奨学金制度です。キズキ共育塾に通い続けるための奨学金を、寄付を集めて実施しています。

映像制作会社からキズキに転職

私は高校時代に不登校の経験があります。その当時に疎外感や孤独感、マイノリティの辛さを感じました。それがきっかけで学校外教育や生涯教育に興味持ちました。

大学時代は、休学をして海外に行ったりしながら6年間過ごしました。そのときにいろんな世界や文化に触れて、不登校だったときの視野の狭さに気づきました。

高校生の不登校だった頃にいろんな世界に触れることができたら励みになっただろうと思いました。その頃の自分のような人に、家からでも気軽に見ることができる媒体で様々な世界を伝えたいと思い、映像制作会社に入りました。

そこから転職をしたのは、取材のような一定の距離がある仕事よりももっと自分からアプローチする仕事がしたいと思ったからです。転職先にキズキを選んだのは「やり直せる社会」というキズキのミッションに共感したからでした。

教育現場でキズキが大切にしている6つの行動規範

現在の人事担当になる前は、教室運営の担当でした。キズキ共育塾の運営の仕事は、普通の学習塾の運営スタッフの仕事と似ていますが、通ってくる生徒が様々な事情を抱えている場合が多いため丁寧なコミュニケーションが求められます。

教室ごとのスタッフミーティングを週に1回必ず行い、欠席率高い人への対応を検討したり、退塾を引き起こさないための仕組みづくりをしたり、支援の効果をアンケートで測定しています。

スタッフが向く方向の共通認識を持つために設定している6つの行動規範があります。

「一人ひとりがプロフェッショナルであり続けます」、「ファクトとロジックを用いて、自由闊達に議論をします」、「どんなときもインパクトの最大化を目指します」、「多様な視点を持って行動します」、「自らの感情をコントロールしながら、コミュニケーションを行います」、「善意に基づく自己満足の支援には陥りません」は、人事における評価基準にも組み込まれています。

自分が伴走者であるという自覚を持ち、本当に生徒のためになっているのかを日々自分たちの中で問い続けて仕事ができる人を求めています。

互いに認め合える壁のないを目指す保育園

夏秋賢氏 : NPO法人ケンパ・ラーニングコミュニティ協会で保育士をしています夏秋です。

和久津理事長の理念をもとに、保育園の運営と様々な事業を行っています。園数は、認可保育所が東京3園と神奈川1園、行政の認可事業所内保育所が東京1園の計5園です。

活動の使命を「一人一人と向き合う、笑顔のコミュニティ創り」として、多様で自由な学びと出会いの場、一人ひとりが笑顔で過ごせるコミュニティを目指しています。

また、私たちは保育の課題を「壁」だと思っています。保育の現場で、軽度の発達障害者などと一緒にいるやりづらさを感じてしまうと、それが壁となってしまいます。

そのような壁のない現場、みんなに開かれたみんなのための場所として互いに認め合える場所を目指して、それぞれの得意分野を生かしてチームとして多角的に保育に取り組んでいます。

職務経歴多様、国際色も豊かな保育スタッフが在籍

保育業界は圧倒的な女性社会で、業界全体の中の男性の割合は4%です。しかしケンパ・ラーニングコミュニティ協会での男性の割合は20%とかなり多いです。

スタッフの職務経歴も多様で、58%が異業種経験者です。さらに出身国も多様で、出身国は20か国以上にも及びます。そんな様々な環境を経験したスタッフで、日々切磋琢磨しています。

NPO法人「lunchtrip」とコラボして、海外旅行に見立てた世界各地の文化を体験できるプログラムを行っています。様々な国籍の多様なゲストに話を聞くこともでき、世界のことを知ることができます。

スタッフが多国籍であるため子どもに教える遊びも多国籍であり、子どもたちはいろいろなことを体験します。また、給食もいろんな国の料理が出ます。

団体理念に共感し、チャレンジ精神ある人を求めている

父の仕事の関係でこどものころはアメリカで暮らしており、中学2年生の時に日本に帰ってきました。その経験から社会をもっと開かれたものにできないかと考え、保育関係の大学へ進みました。

大学卒業後は幼稚園に就職し、女性社会のなかで頑張りました。その後転職を繰り返しましたが、最終的にケンバ・ラーニングコミュニティ協会に入りました。

NPO法人に入ったのは、社会を変え、生きやすい未来を現実のものにしたかったからです。

現在の業務は保育士として担任クラスを見たり書類を書いたりすることです。それにプラスして、私が立ち上げた法人「カドリー・コアラズ」の仕事もしています。

カドリー・コアラズの法人名は、「コアラ」の子育てのように、全身全霊で子供に寄り添い見守り独り立ちさせる存在でありたいという願いに由来します。

2つの団体での活動を通じて、希望を持てる未来、価値を認め合える社会を作りたいと願っています。

ケンパ・ラーニングコミュニティ協会の理念に共感し、自身の体験や育った環境などを通じて感じてきた思いや、やりたい、やってみたいというチャレンジ精神を持っている人が仲間になってほしいです。

(会場拍手)


4人のゲストが語った赤裸々な話を、受講者の皆さんは真剣な表情で聞き入っていました。聞き終えた後は、自身が教育系NPOに関わっていく具体的なイメージが見えてきたようでした。

ゼミの後半では、4人のゲストによる前半以上にぶっちゃけたトークが展開されました。そちらをまとめた記事もありますのでぜひご覧ください。

このゼミの連載記事
NPO という道がある – ソーシャルキャリアのはじめ方ゼミ「ここでしか聞けない教育系NPOのリアル」

最後までご覧いただきありがとうございました。

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