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数万回の郵送やりとりをデジタルへ。DX推進のきっかけと可能性とは?【あしなが育英会のAWS活用事例】[ PR ]

DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性の高まりを、最近はオンライン会議やビジネスチャットツールなどが身近になってきたこともあり、今まで以上に実感されている方も多いのではないでしょうか。

日本財団が2022年に実施したソーシャルセクターを対象としたデジタル支援のニーズ調査では、『コロナ禍以前と比べて、デジタルツール/デジタルデバイスの重要性は高まり、事業目的を達成するために必要不可欠な存在と、回答団体のほとんどが認識する一方で、十分に活用できていないと回答している団体が「わからない」も含めて5割弱』という結果が出たそうです。(*)

(*)出所:ソーシャルセクターを対象とした『NPO・NGOに係るデジタル支援のニーズ調査』を実施(2022年12月05日 日本財団)

さて今回ご登場いただくのは、一般財団法人あしなが育英会(以下、あしなが育英会)の岡﨑さん、富樫さん、角田さんです。あしなが育英会は「病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたちや、障がいなどで親が十分に働けない家庭の子どもたちを、奨学金、教育支援、心のケアで支える民間非営利団体」です。1969年より本格的に始まったあしなが運動は、50年間の歴史の中で遺児に関わるあらゆる社会問題に取り組まれ、支援した遺児学生の数は約11万人にも上ります。活動範囲は日本国内にとどまらず、アフリカ49カ国の遺児支援にまで広がっています。(2020年時点

最近は、全国5,000件以上の奨学金情報の中から自分にマッチしたものを見つけられる奨学金情報検索サービス「Canpass」(キャンパス)を提供開始。また数万人分の書類のやりとりを郵送で行なっていたところをデジタルに切り替えていこうと「マイページ」の開発も進めていらっしゃいます。

本記事では、デジタルツールやクラウドを活用しながら、アナログからデジタルへの移行を推進されているお三方にDX推進の背景や今後の可能性についてお伺いしました。デジタルの力を事業や業務にうまく活用していきたいと考えていらっしゃる皆さんにとって少しでもヒントになれば幸いです。

■インタビュイー:
・あしなが育英会 理事(国際担当) 岡﨑 祐吉さん
・あしなが育英会 学生事業部 奨学課 課長 富樫 康生さん
・あしなが育英会 学生事業部 学生募金課 課長補佐 角田 諭史さん
■聞き手:
・アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター マーケティングマネージャー 木村 彰宏さん
<目次>
・あしなが育英会のAWS利用状況
・AWSを選んだ理由
・社内も社会も「オンラインが当たり前になった」ことでDX推進の機運も高まった
・数万回の郵送やりとりをデジタルへ。新たにつくる「マイページ」で解決したかったこととは?
・DX推進で感じた「可能性」とは?

写真左から時計回りに、あしなが育英会の角田さん、富樫さん、岡﨑さん、AWSの木村さん

あしなが育英会のAWS利用状況

木村 : 本日はよろしくお願いします。さっそくですが、あしなが育英会の取り組みの中で、「Amazon Web Services」(アマゾン ウェブ サービス、以下、AWS)(*)をご利用くださっていると伺っています。ご利用状況を詳しくお聞かせいただけますか?

(*)アマゾン ウェブ サービス (AWS) は、世界で最も包括的で広く採用されているクラウドプラットフォームです。世界中のデータセンターから200以上のフル機能のサービスを提供しています。急成長しているスタートアップ、大企業、主要な政府機関など、何百万ものお客様が AWS を使用してコストを削減し、俊敏性を高め、イノベーションを加速させています。

岡﨑 : AWSを利用しているものは大きく4つあります。

1つ目が、「あしなが学生募金100回記念特設サイト」です。50年前からの活動で、私たちの大きな事業の一つに、奨学金をもらっている学生たちが行なう全国一斉での街頭募金活動があります。あしながの箱を持って、全国200箇所。春と秋と年に2回実施。50年前からずっと続けて、100回のタイミングに立ち上げました。

あしなが学生募金100回記念特設サイト(https://ashinaga-story.jp

2つ目は、「あしなが育英会のウェブサイト」です。

あしなが育英会のウェブサイト(https://www.ashinaga.org

3つ目は、奨学金情報検索サービス「Canpass」(キャンパス)です。

国内には奨学金制度が5,000件以上存在していますが、支援を必要としている子どもたちに適切な情報が行き届いていない現状があります。「進学したいけど経済的に難しい」「進学したいけど私が家計を支えなくてはいけない」といった理由で進学を諦め、就職を選ぶ高校生はあしなが育英会の高校奨学生全体の20%に及び、また、「どう調べればいいのか分からない」「どれを選べばいいのか分からない」という声も少なくありません。

困っている高校生にもっと支援の手を差し伸べたい。どんな環境でも、高校生が進学できる(Can)と思える奨学金(Pass)と出会える機会を増やしたい。そのような願いを込めてつくりました。

奨学金情報検索サービス「Canpass」(https://canpass.ashinaga.org

4つ目は、まだ開発途中ですが「マイページ」です。住所や電話番号の変更など、奨学生が行なう様々な手続きを今までは紙ベースでやりとりしていたのですが、デジタルに移行させ、双方の手間や時間を短縮させようと準備を進めています。

アマゾンウェブサービス(AWS)とは?

AWSを選んだ理由

木村 : ウェブサイトについてお伺いします。他のサーバーの選択肢もあったかと思いますが、なぜAWSをお選びいただいたのでしょうか?

角田 : ウェブサイトを大規模に変えないといけないタイミングがあったのですが、「安定している」「止まったりする心配もしなくていい」といった理由で開発会社の方々からAWSをご提案いただきました。裏側で色々とアプリケーションサーバーを動かしたり連携したりすることを想定した時に、「AWSだと全て揃っている」というのも選んだ理由の一つです。

木村 : コスト面についてはいかがだったでしょうか?

角田 : 私たちあしなが育英会のメンバーはシステムについてそこまで明るくなかったというのが正直なところです。つまりサーバーの状況などを自分たちでしっかりと管理していたというより、外部の会社に管理をお願いし、逐一状況を確認するということが発生し、コストもかかっていたかと思います。

AWSだと外部にお願いしていた保守業務の一部も自分たちでも簡単にできて、サーバーの状況などもわかりますので、そういう面でのスピード感も、コスト削減に繋がっているのではないかと思います。

木村 : ありがとうございます。クラウドをサーバーの置き換えと考えられるケースがありますが、今おっしゃってくださった通りで、保守費用も含めたトータルコストで考えていらっしゃるということで、クラウドをうまくご活用いただいていると思いました。

インタビュイー:あしなが育英会 学生事業部 学生募金課 課長補佐 角田 諭史さん

社内も社会も「オンラインが当たり前になった」ことでDX推進の機運も高まった

木村 : それぞれのスケジュール感についてもお聞かせください。

角田 : 「100回記念特設サイト」は2020年にローンチし、現在の「ウェブサイト」は2021年にオープンしました。

富樫 : 奨学金情報検索サービス「Canpass」は、2020年から社内で検討が始まり、2021年にベータ版を、2022年に正式版を公開しました。開発途中の「マイページ」は、この夏からは本格的に奨学金利用者に向けて運用を開始していこうと考えており、最終段階です。AWSの本番環境を整えている段階で、最後の仕上げの段階だと認識しています。

木村 : 4つともここ数年の動きなんですね。「クラウドをもっと積極的に活用していこう」といった意識の変化が組織の中で起こったりしたのでしょうか?

岡﨑 : 以前から組織内でデジタル化について「いつかやったらいいね」という話はもちろんありましたが、なにかきっかけがあったかというと、100回目の募金活動だったり、そういった区切りのタイミングがあったことは一つ大きな要因だったかもしれません。

富樫 : 職員も学生も「オンラインを利用する環境が当たり前になった」ということがDX推進に大きな影響を与えたのではと感じています。

コロナ禍になって、それまで対面で奨学生の採用面接を行なっていたのをオンラインに切り替えたことによって、年齢や経験に関係なく全職員がZoomのようなオンラインツールを強制的に使うようになりました。もちろん色々な失敗もありましたが、それでもなんとか走り抜けました。学生からも「どうやってツールにアクセスするんですか?」といった問い合わせを当初はたくさんいただいたのですが、2年目以降はほとんどなくなりました。

オンラインが身近で当たり前になったからこそ、DX推進の様々な取り組みについて、「それいいね」と言っていただけるハードルがちょっと下がった気がして、推進しやすくなったと思います。

インタビュイー:あしなが育英会 学生事業部 奨学課 課長 富樫 康生さん

数万回の郵送やりとりをデジタルへ。新たにつくる「マイページ」で解決したかったこととは?

木村 : マイページについてお伺いします。紙ベースでのコミュニケーションをデジタルに移行していこうとされていますが、詳しくお聞かせください。

岡﨑 : まずはコミュニケーションのスパンについてお話します。高校3年間、大学4年間と、長い人で7年間奨学金を受け取るのですが、卒業して社会に出てから20年以内に返還していただくことになっていますので、そうすると長い人で27年間お付き合いすることになります。

木村 : 二十数年付き合うシステムになるんですね。紙ベースでのコミュニケーションというのは具体的にどのようなイメージでしょうか?

富樫 : 奨学金を申し込みたい方に申請書をお送りするところからスタートします。電話で住所をお伺いして郵送します。申請書は記入後にこちらにまた郵送で戻ってきます。ただ記入漏れやハンコが押されていなかったりすることもありますので、郵送のやりとりが再度発生することもあります。

全てが整ったら、今度は「あなたは正式に採用されました」という書類を郵送し、奨学金の送金がはじまります。また年に1回、奨学生から「こんな学校生活でした」という生活状況報告書のやりとりも郵送で行なっています。ちなみに2022年は約8,000件でした。

これは奨学生の高校生・大学生を合わせて約8,000人ということなのですが、それとは別に返還中の方も約33,000人います(取材時点)。引き落としの人もいますがコンビニの振り込み用紙が必要という人もいて、そこでも郵送物が発生しています。年に1回、「あなたは今これだけ返還していて、これだけ残っているよ」という現状報告の通知もその約33,000人に郵送でお送りしています。

木村 : なるほど、大量のやりとりを郵送で行われていたわけですね。「マイページ」はそういった紙ベースのコミュニケーションをデジタルに移行していこうという取り組みと理解しました。開発途中ということですがどのような機能を実装予定でしょうか?

富樫 : いくつかありますが、ここではお知らせ機能についてお話します。マイページに定期的に閲覧しにきたくなるような仕掛けをつくって情報提供していきたいと考えています。例えば奨学金のお役立ち情報を一人ひとりに郵送で定期的にお届けしようとすると大変ですが、デジタルの強みを活かしてマイページ上で定期的に配信できるといいなと思っています。

岡﨑 : 卒業生たちの活躍についても、現役の学生たち、他の卒業生たち、寄付者の皆さんにもっと知っていただきたいので、そういう意味でマイページは発信基地にもなっていくと思います。

インタビュイー:あしなが育英会 理事(国際担当) 岡﨑 祐吉さん

DX推進で感じた「可能性」とは?

木村 : 最後に、あしなが育英会としてデジタルツールやクラウドを今後どのように活用していきたいのか、お三方からそれぞれお伺いできたらと思います。

角田 : 先日も募金活動を全国で一斉に実施したのですが、今って小銭をお持ちの方が少なく、街頭での寄付をQRやICカードのタッチで可能にできないだろうかと考えています。また、ボランティアの登録も一昨年ごろからシステムを導入しクラウド上でやりとりしています。そのシステムを今後もっとうまく活用しながら、より多くの方々にあしながにご参画いただき、子どもたちのことを考えていただけるといいなと思います。

富樫 : デジタルの力によって奨学金の申し込みがより簡単になるのではという可能性を感じています。また奨学金の申請から返還までを全てオンライン上で完結できれば、今よりもさらに効率的な運用も実現できるだろうと期待しています。加えて、実態把握というのも大きな役割の一つです。奨学生の状況や情報をデジタル化することで、そのデータを活用しながら、「こういう教育を届けよう」「こういうサポートが必要だ」といったところまで繋げられるようになっていきたいです。

岡﨑 : 私たちは日本国内にとどまらずアフリカでも活動を続けていますが、例えばアフリカの子どもたちの状況を知るためには今までは現地を訪れる必要がありました。しかし現在は、アフリカの子どもたちの状況やもちろん日本の状況も、世界中の人がデジタルを通じて知ることができます。デジタルを通じて思いやりを届けることも可能です。そうやって繋がり合うことに大きな可能性を感じています。本来人間が持っている大事な愛情、やさしさ、思いやりというものが、デジタルを通じてより鮮明に浮かび上がってくるものになるのではないでしょうか。

木村 : 今回のお話を聞いて、「DX化のためのDX」ではなく、あしなが育英会に関わる様々な方の利便性を向上していくための一つの手段がDX、クラウド活用であったと理解しました。クラウドを活用して改善されようとしていた課題、活用後のメリットや次に考えられているステップが明確なのも目的と手段がはっきりとされているからだと感じ、とても勉強になりました。

岡﨑 : 社会貢献を目指している団体というのは、数千人、数万人規模ではないので、そこで働く一人ひとりが様々な業務や役割を担っています。その中で、デジタルの力で対応できるものはデジタルにお任せして、「自分たちにしかできないこと」「職員たちにしかできないこと」、つまり本業にフォーカスして日々の仕事に取り組んでいくということが、それぞれの団体の強みをさらに活かすことに繋がっていくのではないかと思います。

木村 : まさに我々がAWSを通して皆様に実現していただきたいと考えていることでもあります。「AWSは様々な面で皆様の負荷を軽減します、ぜひ皆様はご自身の仕事に集中してください」と。あしなが育英会様の取り組みと非常にマッチすると感じました。皆さん、本日はありがとうございました。

聞き手:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター マーケティングマネージャー 木村 彰宏さん

NPO・非営利団体を支えるAWSクラウドサービスが気になった方はぜひ、AWSの日本の営業担当窓口にお問合せください。

本記事は「アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社」の提供により企画されました。