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NPOの世代交代は「ITへの考え方が変わるきっかけ」になる──AWS×NPOサポートセンター対談[ PR ]

NPOの事業承継について、もっと話しましょう!——

日本のソーシャルセクターは多様化・成熟化する一方で、NPO法人は2018年度に初めて総数が減少。内閣府の調査結果(*)によると、「約6割のNPO法人の代表が65歳以上」「約6割が初代の代表」、代表者交代に向けた準備の状況も「約6割が進んでいない」と世代交代があまり進んでいない現状があります。

(*)特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査(平成31年)

事業承継や世代交代の話題は、非常にセンシティブ(繊細)だからこそ、自由にポジティブに語り合いたい——それを体現する場こそ、今年10月と11月に開催される「NPO事業承継サミット2023」。

本記事はその連動企画で、主催であるNPOサポートセンターの代表理事・松本と、NPOの事業承継について一緒に考え、ともに取り組んでいく企業の皆さんとの対談企画です。ちなみに松本自身も、2019年に先代の創業者から事業承継して2代目の代表理事になっています。

さて今回は、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の上田さん、須藤さんにご登場いただき、主にITやシステムの観点から事業承継や世代交代について一緒に考えていただきました。多くの人々がITと日々関わり、インターネットを通じてシステムを使うような時代だからこそちゃんと知っておきたい、そんなエッセンスが詰まった内容となっております。

上田 圭祐さん
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター アカウントエグゼクティブ
1978年生まれ。中央大学理工学部応用化学科学士卒業。AWSでは非営利セクターのお客様専任の営業担当。2015年から非営利セクターのお客様を担当をしている非営利セクター担当営業の専門家である。
自身も2008年6月から高校生、大学生のキャリア支援と地方創生を行うNPO法人鴻鵠塾(こうこくじゅく)の創業者として15年間で約1万人のキャリア支援と約50の地方創生のプロジェクトを実施。2021年1月に2代目に継承済み。また現在未就学児や小学生の学力格差を無くすNPO法人キッズゲート(登記中)の創業メンバーとしても活動中である。

須藤 裕也さん
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター技術統括本部 アソシエイト ソリューションアーキテクト
1999年生まれ。一橋大学商学部経営学科学士卒業。AWSでは非営利セクターのお客様専任のソリューション アーキテクト(技術)担当。自身も学生時代に、人口減少のため不振に陥っている商店街の再活性化を目指すNPO法人 くにたち富士見台人間環境キーステーション(KF)において、くにたち野菜と地域物産の店「とれたの」の運営に従事。その後、2022年にAWSに入社。技術的・ビジネス的な側面からお客様のクラウド活用支援をおこなっている。

松本 祐一
NPOサポートセンター代表理事 / 多摩大学経営情報学部教授
1972年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。専門はソーシャルマーケティング。学生時代に「国境なき医師団」日本事務局に関わったことをきっかけに学生団体の立ち上げを経験後、市場調査会社で商品開発に携わり2005年から多摩大学総合研究所勤務。2019年4月より現職。多摩地域を中心に企業、行政、NPOの事業開発支援に従事し、セクターを超えた「協創」をコーディネートしている。NPOサポートセンターには2012年よりNPOマーケティングプログラムの講師として関わり、同年理事に就任。その後、事業構造改革と世代交代に携わってきた。

創業者の志や想いをどのように受け継いでいくのか——

松本 : 今回は我々NPOサポートセンターが主催する「NPO事業承継サミット2023」に連動した対談企画です。上田さん、須藤さん、本日はよろしくお願いします。

上田 : よろしくお願いします。

須藤 : よろしくお願いします。

松本 : まずは私たちが考えていることをお話します。

NPOの事業承継や世代交代の場合、やはり企業とは違う特徴があると思います。例えば「創業者の志や想いをどのように受け継いでいくのか」というのは、企業においても重要な課題だと思いますが、NPOの志は創業者だけでなく、立ち上げ当初の仲間や問題の当事者たち等「みんなの想い」であるともいえます。その「みんなの想い」をどのようにとらえて、どう継承していくかというのは企業と比べて、さらに難しい課題といえるでしょう。

また企業の場合、受け継ぐものをある程度お金に換算・評価してから引き継いだり、M&Aをしたりしますが、NPOの場合、「見えない価値」「お金に換算できないもの」があまりにも多過ぎます。それらをどのように評価して、どのように受け継いでいくのか──決まった方法や過去の事例が非常に少ないんですね。

そういう意味でも、まずはNPOの事業承継や世代交代の全体像を解きほぐしていきたいと考えています。

NPOサポートセンターは、事業支援や経営支援を中心に行なう中間支援組織です。この事業承継や世代交代についても経営という視点から「組織が変わるチャンス」だとも捉えています。私たちの考える事業承継は、単純に代表が変わるということではなく、組織を変えるためのエンジンのようなものである、とポジティブに捉えて、「モデルチェンジ」と呼んでいます。

モデルチェンジは2種類ありまして、「メンタルモデルチェンジ」と「ビジネスモデルチェンジ」です。

メンタルモデルチェンジは、NPOのミッションやビジョンをもう一度、捉え直そうというものです。特に創業時と同じ社会課題を扱っていても、社会の様々な変化とともに、おそらくその社会課題自体も変化していると思います。この変化を把握したうえで、「自分たちは何を行なう団体なのか」「何を目指す団体なのか」を更新していく——これをメンタルモデルチェンジと呼んでいます。

ビジネスモデルチェンジは、持続可能な組織や事業にしていくためにはどうしたら良いのかを考えるというものです。例えば、既存事業や業務プロセスの見直し、新規事業の開発などが含まれますが、その中でICTやDXの取り組みは大きな位置を占めるのではないかと思っています。

AWSさんの取り組みも、事業承継や世代交代と組み合わさっていくことで何か新しいことができるのではないでしょうか。この事業承継問題について、特にモデルチェンジのためにどうしたら良いのか、ITやシステムの観点から本日は一緒に考えていきたいです。

松本 祐一(NPOサポートセンター代表理事/多摩大学経営情報学部教授)

NPO・非営利団体のAWS活用について

松本 : NPOや非営利団体の皆さんはAWS(*)をどのように活用されていらっしゃるのでしょうか?

(*)アマゾン ウェブ サービス (AWS) は、世界で最も包括的で広く採用されているクラウドプラットフォームです。世界中のデータセンターから200以上のフル機能のサービスを提供しています。急成長しているスタートアップ、大企業、主要な政府機関など、何百万ものお客様が AWS を使用してコストを削減し、俊敏性を高め、イノベーションを加速させています。

上田 : 我々のサービスで言うと、「仮想サーバー」をお使いいただいているケースが多いかと思います。

例えば、団体のホームページを、「Amazon EC2」という仮想サーバーの上で構築していただく形でご利用いただいています。ホームページと近いところで言えば、会員向けのマイページをつくる場合にご利用いただくケースもあります。

また、お客様から直接お伺いしたお話の中からAWSのメリットについてお話しますとクラウドの柔軟性があげられます。例えば、年に2回ほどホームページへのアクセスが急激に増えるタイミングがある団体さんからは、アクセス急増時のみ拡張することでそんな時でもサイトが落ちることが全くなく、AWSを利用していて良かったとおっしゃっていただきました。

他にも、サポートしてくれる技術者の数が非常に多いというお話や、AWSに関する情報をインターネットで探す時に情報量が非常に多くて助かるというお話も、お客様からいただくことがあります。

須藤 : 技術的な面からお伝えしますと、日本中・世界中にITインフラが整っています。サーバーなどが設置されているデータセンターについても災害対策をしっかりと行なっています。

また、例えばサーバーを調達する場合、今まででしたら一度購入してしまうと一定期間契約が続いてしまうなど、変化の激しい時代にも関わらず柔軟に対応するのが難しい現状があったかと思います。しかし、AWSをご利用くださっている皆様にとって、今までお話したようなメリットを持つグローバルリソースをすぐにご使用いただけて、さらにはすぐにやめることもできるというのも一つ大きなメリットかと考えています。

AWS活用についてもっと詳しく知りたい方は、NPO・非営利団体の皆さんへのインタビュー記事が公開中ですので、ぜひあわせてご覧ください。(画像をクリックすると、本サイト内のそれぞれの記事に飛びます)

「AWSは様々な面で皆様の負荷を軽減します、ぜひ皆様はご自身のお仕事に集中してください」

松本 : 振り返ってみると、私がNPOに関わり始めたのは、NPO法(*)ができる直前ぐらいからなのですが、当時と比べると、NPOが取り扱うデータの量は爆発的に増えていますね。

(*)特定非営利活動促進法(1998年施行)

また最近は、予算の規模が大きかったり寄付者の数が多かったりするNPOも誕生しています。そのような団体にとっては特に、先ほど上田さんがおっしゃってくださった通りで、サイトが落ちないといった安定性は非常に価値が高くなると思っています。

ですので、事業承継や世代交代を通じて組織がまさに変わろうとした瞬間に、「システムそのものをどうしたらいいか?」という話題は当然出てくるでしょう。その辺りはどのように考えていらっしゃいますか?

上田 : まず大前提として、私たちの会社が皆様に伝えたいメッセージは、「AWSは様々な面で皆様の負荷を軽減します、ぜひ皆様はご自身のお仕事に集中してください」ということです。

NPOの事業承継は、いわば志の承継といいますか、企業より大変な側面もあるかと思います。先ほど松本さんから、『NPOの場合、「見えない価値」「お金に換算できないもの」があまりにも多過ぎる』というお話をいただきましたが、まさにそういった事業継承に集中していただきたいと思っています。

私たちのようなクラウドベンダーは、皆様の色々な課題にフィットした形で対応できますし、それが強みだとも考えています。課題に対して私たちから提案させていただくことも可能です。

システムの構築やホームページの立ち上げなど、大きいところから小さいところまで、皆様に寄り添う形で柔軟に対応できますので、事業承継や世代交代という文脈においても、様々な特徴をお持ちのNPOの皆様にとって相性が良いのではないでしょうか。

松本 : なるほど。それこそ一つの仮定ですけど、例えばクラウドを活用することで、「寄付者一人ひとりのマイページをつくれます」となった瞬間に、NPO側の発想も変わってくるのではないでしょうか。

つまり、単純にNPO側のやりたいことやニーズに合わせてテクノロジーを活用するだけではなく、逆にテクノロジーの活用方法を知ることで生まれる「新たな可能性」もあるのではないかと思いました。

上田 : たしかに、おっしゃる通りですね。

上田 圭祐さん(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター アカウントエグゼクティブ)

事業承継や世代交代は「ITに対する考え方が変わるきっかけ」にもなる。

松本 : 他にも何か、事業承継や世代交代について、ITやシステムの観点から考えていらっしゃることがあればお伺いできればと思います。

須藤 : 冒頭で、事業承継や世代交代は「組織が変わるチャンス」だとおっしゃっていましたが、私も同じように、「ITに対する考え方が変わるきっかけ」にもなると考えています。

これまでのITシステムは一度つくったらおしまいで、そこから先は、そのシステムをいかに守り続けるのか、いかに使い続けるのかというところにフォーカスされてきました。しかし現在、環境の変化が非常に激しいですし、多くの人々がITと日々関わり、インターネットを通じてシステムを使うような時代です。

ですので、例えば、世代交代のタイミングで、「ITをよりチャレンジングな領域で使ってみる」というのはいかがでしょうか。

今はクラウドを使うことで、ITシステムのリソースの調達が従来に比べて簡単にできます。先ほどもアイデアとして登場しましたが、「寄付者一人ひとりのマイページ」を新しくつくってみようといったように、クラウドを使うことでよりチャレンジしやすい環境が整ってきています。先ほどお話したすぐにやめられることもメリットになりますよね。

ITを使ったチャレンジを積み重ねていくことで、チャレンジングしていくようなマインドへとシフトしていくのではないかと思いました。

松本 : ありがとうございます。

そういう意味では例えば、NPOに関わってくださった方の「関わった時間」や「その団体との関係性」までデータ化・見える化できるようになるといいですね。

今までなかなか目に見えなかった「NPOの価値」をデータとして捉えて数値化できるようになると、「このNPOはどんな成果を出しているのか」「このNPOはどんなものを資産として持っているのか」が見えてきます。

つまり、事業承継や世代交代の時に、「このNPOは社会においてどのような価値があるのか」「このNPOを受け継ぐことがどれほど意味のあることなのか」が明らかになることで、そこから先、また今までとは見えてくるものが変わってくると思います。

その辺りのことを、須藤さんのおっしゃる通り、NPOにはチャレンジしてほしいですね。

須藤 裕也さん(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター技術統括本部 アソシエイトソリューションアーキテクト)

想いのある人たちをさらに巻き込んでいくために——

松本 : ITを使ったチャレンジについてさらに深掘りして考えてみると、テクノロジーの活用方法を提案・企画できる人材も非常に必要になってくると思います。しかしNPO側にはそういう人材がなかなかいません。

これからのNPOにとって、「自分たちにしかないオリジナルのデータをどれだけ持てるか」が重要で、「自分たちの関わっている社会課題をデータでどのように見せていくのか」が大事になってきます。

そういったデータの扱いも、NPO側は自分たちだけではなかなかできないので、その辺りをそれこそ須藤さんのような専門の方にサポートしていただきながら進めていけたらNPOとしても助かるでしょうし、そのような人の繋がりもうまくつくっていけたらいいなと思います。

上田 : そうですね。我々としても、「お客様のコミュニティづくり」は今後絶対に取り組んでいかなければいけないと思っています。

興味深いことにどこの企業の方も「非営利のユーザー会が一番盛り上がる」とおっしゃいます。やはりその場に集う方々の根底にある想いが、「社会課題を解決する」「世の中を良くする」というところで共通していて、みんなで共有しようという観点から出し惜しみなくオープンにどんどん会話も盛り上がります。

そういうところに我々のようなスペシャリストも入っていって、仲間づくりや様々なお手伝いができればと思っています。もちろん我々の会社だけではなくて、日本のIT業界全体が一体となって、NPO・非営利団体の皆様に対してサポートしていけると良いのではないかとも考えています。

松本 : 確実に社会は変わりつつあって、想いのある人たちが増え、寄付も、そのためのツールも増えています。しかし、取り組む人自体がいなくなってしまったら全く意味のないことです。

やはりこのタイミングでNPOの事業承継や世代交代について真剣に考えなければいけません。

一方で、非常にセンシティブ(繊細)な話題でもあります。しかしだからこそ、声を出して、まずはみんなで自由にポジティブに語り合いましょうというのが、今回のNPO事業承継サミット2023の大きな目的です。

とりあえずこの話題をシェアして、もう少し色々と取り組んでみましょうというのをスタートにしたいですね。そこに関わる担い手やステークホルダーが増えれば増えるほど良いと考えています。

まさに今回のような出会いの中で、「じゃあ、システムとしては何ができるのか?」といったことも、これからも皆さんと一緒に議論できればと思っていますので、ぜひ引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

上田 : ありがとうございました。

須藤 : ありがとうございました。


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本記事は「アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社」の提供により企画されました。