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NPOの世代交代は組織が変われる一番のチャンス—— ソノリテ × NPOサポートセンター 代表対談 [ PR ]

何を受け継ぎ、何を変えるのか。世代交代から考えるNPOのモデルチェンジとソーシャルセクターの未来——そんな副題のついたイベントが2020年に開催されました。

その名は「NPO事業承継サミット2020」。

日本のソーシャルセクターは多様化・成熟化する一方で、NPO法人は2018年度に初めて総数が減少。内閣府の調査では約6割の団体が初代及び65歳以上の代表で、世代交代が進んでいないという結果も。そんな中で、ソーシャルセクターの未来を「事業承継」という視点から考える日本初のNPOに関する事業承継イベントでした。

さて今年10月と11月に、3年ぶりに2回目となる「NPO事業承継サミット2023」が開催されます。

本記事はその連動企画で、主催であるNPOサポートセンターの代表理事・松本と、NPOの事業承継について一緒に考え、ともに取り組んでいく企業の皆さんとの対談企画です。今回は、「非営利組織に特化した、オンライン募金システムの開発提供と事務代行サービス」を行なっている株式会社ソノリテ 代表取締役・江﨑さんにご登場いただきます。

対談のテーマはもちろんNPOの事業承継・世代交代ですが、皆さんの日々の業務のヒントになるお話や考え方も含まれています。今現在、事業承継・世代交代の課題に直面していない方でも十分お楽しみいただける内容となっております。

江﨑 礼子さん
株式会社ソノリテ 代表取締役
1970年生まれ。高校卒業後地元企業に就職し結婚、離婚を経てから放送大学へ入学し、茨城大学地域社会論ゼミナールにて押しかけゼミ生としてNPO研究を行う。放送大学卒業と同時に認定NPO法人世界の子どもにワクチンを日本委員会に就職。事務局次長として7年半、国際協力活動に従事し、ミャンマーサイクロン被災地の視察ではミャンマー保健省やUNICEFとの連携で支援を実施(2009年2月)。その後、シーズ・市民活動を支える制度をつくる会にてNPOに関する税制改正要望に携わり、2011年の法改正につながる。2010年4月にソノリテ設立。オンライン募金システム「Bokinchan」を提供するほか、国立大学の基金事務局の立ち上げ時にコールセンターを担うなど、非営利組織の募金集めや運営のサポートを行うと同時に、企業内基金の助成金運営事務局も担当。

松本 祐一
NPOサポートセンター代表理事/多摩大学経営情報学部教授
1972年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。専門はソーシャルマーケティング。学生時代に「国境なき医師団」日本事務局に関わったことをきっかけに学生団体の立ち上げを経験後、市場調査会社で商品開発に携わり2005年から多摩大学総合研究所勤務。2019年4月より現職。多摩地域を中心に企業、行政、NPOの事業開発支援に従事し、セクターを超えた「協創」をコーディネートしている。NPOサポートセンターには2012年よりNPOマーケティングプログラムの講師として関わり、同年理事に就任。その後、事業構造改革と世代交代に携わってきた。

進まぬNPOの事業承継・世代交代。この課題を考えていくことでソーシャルセクターが変わっていくきっかけに。

松本 : 江﨑さん、本日はよろしくお願いします。

江﨑 : よろしくお願いします。

松本 : 今回は我々NPOサポートセンターが主催する「NPO事業承継サミット2023」に連動した対談企画ということで、まずは私たちの問題意識と現状をお話いたします。

私自身、2019年に先代の創業者から事業承継して、2代目の代表理事になりました。そのプロセスの中で「NPOの事業承継は非常に難しい」と感じた一方で、「NPOの事業承継を考えていくことで、ソーシャルセクターが変わっていくきっかけになるのでは」と可能性も感じました。

そこで、NPOサポートセンターが取り組む大きなテーマとして、ソーシャルセクターの事業承継や世代交代をとりあげることにしました。

内閣府の調査結果(*)によると、「約6割のNPO法人の代表が65歳以上」「約6割が初代の代表」、代表者交代に向けた準備の状況も「約6割が進んでいない」と世代交代があまり進んでいない現状があります。

(*)特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査(平成31年)

肌感覚としても周りの代表は高齢化しています。ただ人生100年時代と呼ばれるように、決して高齢だから辞めるのではなく、「いい形で世代交代していく流れをどのように生み出すのか」「その流れを将来に渡ってどのように継続させていくのか」というところに問題意識を持っています。

私たちNPOサポートセンターは事業支援や経営支援の中間支援団体で、事業承継や世代交代の支援についてはコンサルティング等サービスレベルでも取り組んでいます。しかし事業承継や世代交代がなかなか進んでいかない現状に、これは社会に対して大きく問題提起していかないと間に合わないのではと危機感も感じています。

そこで2020年、日本初のNPOに関する事業承継イベントを開催しました。当時も問題意識を持ってくれた方はいましたがまだまだ小さな動きでした。そこから数年経った今でもなかなかこの現状は変わっていません。改めてこの事業承継問題を世に問いたいということが、「NPO事業承継サミット2023」を開催する大きな趣旨です。

松本 祐一(NPOサポートセンター代表理事 / 多摩大学経営情報学部教授)

あらゆる面でNPOを支えるというスタンス。優しさにあふれた社会の実現を目指して——

松本 : 続いて、ソノリテさんのサービスや取り組みについてお話いただきたいと思います。

江﨑 : ありがとうございます。まずは、NPOの事業承継に関する問題意識をご説明いただき、本当にその通りだと改めて思っております。

松本 : ありがとうございます。

江﨑 : 株式会社ソノリテは「非営利組織に特化した、オンライン募金システムの開発提供と事務代行サービス」を行なっています。2010年に設立し、ミッションに「NPOの活動支援を通して優しさにあふれた社会の実現に貢献」することを掲げています。

オンライン募金システムには、「Bokinchan(ボキンチャン)」と、そこに支援者名簿管理の仕組みも連携させた、支援者名簿管理プラットフォーム「ぼきんとん(Bokintone)」の2種類があります。

>> オンライン募金システム2種の紹介ページ

事務代行にはいくつかパターンがあります。例えば団体が立ち上がったばかりのフェーズですと、事務スタッフの経験が浅かったり、有給の事務スタッフがおらずボランティアでやっていたりするところがあります。そういった団体の事務代行では、会計や日々の処理をサポートしながらも、数年後には自団体内で回せるようにシステムをちゃんと構築していきましょうとお伝えしています。一方で、バックオフィス業務を全てソノリテにアウトソーシングされる団体もいらっしゃいます。

>> 事務代行サービスの紹介ページ

システムだけでなく、バックオフィスや広報・企画のコンサルといった分野の仕事も含めて、あらゆる面でNPOを支えるというスタンスです。

今年の春、新しいコンセプトワードとして「やさしいほうの世界へ」というメッセージを考えました。やさしいほうは、一人ひとりにとって異なるかもしれませんが、それでもやっぱりやさしくないほうより、やさしいほうを目指して頑張っている人たちがいる、それは正解は1つじゃないかもしれない、もしかしたらそっちはやさしいほうではないかもしれない、それでも頑張っている人たちをソノリテとして全力でサポートしたい、そんな想いを込めたメッセージです。ホームページに動画も上げているので是非ご覧ください。

>> やさしいほうの世界へ

江﨑 礼子さん(株式会社ソノリテ 代表取締役)

世代交代は「組織が変われる一番のチャンス」。そのタイミングで組織のあり方やシステムも考え直す。

松本 : オンライン募金システムや事務代行のサービスを通じてNPOをご支援されている中で、事業承継や世代交代といった観点から、江﨑さんは何か思っていらっしゃることはありますか?

江﨑 : NPOの様々な業務がどんどん属人化していき、いざ代わりの人を入れようと思った時には、ある特定の人にしか分からない状態になってしまっていることをお見かけすることがあります。

事業承継や世代交代に直接的ではないかもしれませんが、「業務を属人化させない」「業務をシステム化する」というところで私たちソノリテがお役に立てるといいなと考えています。

松本 : とてもよくわかります。

実は世代交代のタイミングは「組織が変わることのできる一番のチャンス」であり、「とにかく何かを変えなきゃいけないと誰しもが思う瞬間」でもあります。そのタイミングで組織のあり方やシステムを考え直すということは十分あり得る話だと思います。

実際、私たちの団体の事業承継のプロセスを振り返ってみても、事務局長が最初に変わり、事業の構造を徐々に変えていき、代表が変わったのは最後の最後でした。やはり単純に代表者が変わるという話ではなくて、組織そのものの構造を変えることで初めて、世代交代ができる状態が生み出されることになると思います。

まさにシステム導入などのソノリテさんの業務は、実はそのNPOのマネジメント自体を変えていくというところにも非常につながっていると感じました。

江﨑 : ありがとうございます。たしかにその通りですね。

NPOの「見えない資産」を「見える化」したい。キーワードはデータの力。

松本 : 実は、ソノリテさんのサービスや取り組みと事業承継・世代交代とで、うまく連動できたらいいなと思っていることがあります。

江﨑 : 何でしょうか?

松本 : それは、NPOの「見えない資産」をなんとか「見える化」できないかということです。

正直私自身もそうだったのですが、前の代表から受け継げないのが「ネットワーク」なんですよね。代表個人のネットワークやつながりがそのNPOに与えている影響はとても大きいです。一方で、非常に個人的なネットワークは継承できないものとして、それはそれでいいと思っています。

今のは一例でしたが、このようなNPOの「見えない資産」の中で、支援者や寄付者のデータベースっていうのも、これまたひとつ大きな資産じゃないですか。

例えばある団体が活動できなくなって、組織自体がもうなくなるかもしれないという時に、その団体が取り組む課題や活動に共感して寄付されていた方々はどうなってしまうだろうと思います。単純に他の同じような団体の方に移ってくださいとはできないですよね。

この団体のデータベースに蓄積されているのは、想いを持って寄付された方々のデータで、もし何百人や何千人といた場合、「この人たちのこの想いはどう受け継いでいくのですか?」という問いについては、たぶんあまり考えられてきていないと思います。

江﨑 : そうなんです、そうなんです。

松本 : 「これだけの人たちの想いがまだあるよ」「この想いをどうするんですか」というのをうまく見える化して、引き継いでいくとか別の形で活用していくということができるといいなと思っています。

江﨑 : まさにそれは「データの力」なんですよね。

ソノリテではデータベースを活用することがとても大事だと考えています。

もちろん人脈を承継することができるかはわかりませんが、支援しているNPOの方々には、「もし内部の人が変わっても、この人はこういう経緯・想いでやってらっしゃるというのがわかるようなデータの構築をしましょう」ということをお伝えしています。

例えば、Aさんという方から団体に問い合わせがあった時に、この方が「どういう時にどういう関わり方をしてくださったのか」というのを誰が見てもわかるような状態をつくっておくというのは、まさに事業承継を行なう際にスムーズに業務が引き継ぐことができるという点で、つながってくると思います。

松本 : なるほど。団体への関わり方が多様に存在する中で、その団体が「その方をどのように捉えているか」によって、その団体の「データベースの姿」も当然変わってくるんでしょうね。

江﨑 : 関わり方が多様な人を軸にしたデータベースは、非営利組織特有のものなんですよね。

営利企業の顧客管理データベースなどは、あくまでもその商品を買ってくれた人、という名簿ができます。

しかし、非営利組織の場合は、購入者でもあるけれど会員でもあって、寄付者でもあり、イベント参加者にもなるしボランティアでもある。人を軸にしたさまざまな関係性が見えるように構築するのが非営利組織のデータベースの特徴です。

その非営利組織特有の特徴をわかっているシステム会社が構築しないと、なかなかうまく使えている団体はまだ少ないような気がしています。逆に言えば、そこをうまく構築できれば、寄付も集まるし団体運営もうまくいく、ということになると思います。

事業承継や世代交代をテーマに掲げ、「自分たちはいったい何を目指しているのか」を一緒に考え直すきっかけに。

松本 : 今、私たちのような中間支援団体の役割というのが、非常に見えなくなってきている中で、「次の我々のやるべきこと」も考えていかなければいけないと思っています。

サービスという観点でいうと、当然ながら「サービスを提供して対価を得るという私たち自身の組織をしっかりと運営していくためのもの」と、「ソーシャルセクター全体を底上げしていきマーケット自体を大きくしていくためのもの」と両方存在します。

後者はある意味儲からないという話でもあって、要は競合が増えていくことを推奨するみたいなところもあるわけですよね。そのあたりのバランスをとりながら、どうしたらソーシャルセクター全体が進化できるかを考えなければいけません。

それこそNPO法ができた頃(*)は、「NPOとはこういうものである」「NPOのマネジメントが必要」ということが、当時は一つの大きなメッセージとして役割を果たしていたと思います。しかし、そのメッセージも当たり前になってきた中で、「じゃあ次の中間支援の役割は何なのか?」というのを我々も悩んでいます。

(*)特定非営利活動促進法(1998年施行)

江﨑さんはそのへんはどうお考えでしょうか?

江﨑 : 「中間支援組織の役割」、まさにいま大事な時だと思っています。

私が最初にNPOと出会ったのは1998年、NPO法が議員立法で成立した年でした。

はじめて、特定非営利活動促進法が成立し施行されるという話を聞いたときは本当に衝撃を受けました。これからは、市民が主体となって行政や企業と対等に契約をすることもできるし、公共活動の一端を市民が担う時代がくると。まったくその通りだと嬉しくなりました。

やはり法律よりも市民の生活が先を行っているというか、法律でカバーできないところをNPOが助け合いの形でどんどん取り組み、それを政策提言につなげられる力もあるじゃないですか。市民活動にはそういう力があると私は信じています。

また私自身のNPO活動も中間支援から始まっています。そういった「つなぎ役」といいますか、団体同士で情報を共有しあったり、政策につながるような提言をまとめたり、そういった力を持てるところが中間支援の役割を担っていくのではないかと思っています。

ですので、ソノリテとしてもNPOのファンドレイジング支援だけでなく、中間支援組織が行なう、特に政策提言活動は重点的にお手伝いしたいと考えています。そのために、持続可能な組織運営のためにも、事業承継は重要なテーマですね。

松本 : ありがとうございます。

今まさに、企業でも社会貢献的なことができたり、ソーシャルビジネスができたりする中で、NPOという存在は──これは法人形態という意味でのNPOではなく──いったい何をしていくのかということを見つめ直す必要があります。

事業承継や世代交代の瞬間というのはまさにそのタイミングだと思っています。

我々が事業承継や世代交代のテーマを出すことで、「自分たちはいったい何を目指しているのか」ということをみなさんと一緒に問い直すきっかけにもなると考えています。これは我々中間支援としての、今の一つのテーマだと思いながら取り組んでいます。

ぜひまたソノリテさんとも一緒に議論したり取り組みができればと思っております。本日はありがとうございました。

江﨑 : こちらこそありがとうございました。


株式会社ソノリテが協賛する「NPO事業承継サミット2023」は、10月30日(月)に全国で活躍するNPOや企業の代表者たちが集結する対面イベントを開催し、10月15日からは約1ヶ月間ご視聴いただけるオンラインセッションを配信します。

事業承継に取り組む際の課題、世代交代を果たした事例、事業承継を支援する側の視点など、NPOの事業承継についてもっと語ることができるようになります!ぜひ、ご参加ください。

本記事は「株式会社ソノリテ」のご提供により企画されました。