「寄付の申込みから領収書発行」までセールスフォースで一元管理を実現――認定NPO法人 ACE
・ 手入力作業の負担が、大幅軽減。
・ ソフトのインストールや更新作業が不要。
・ 米国NGOの"支援者獲得"を支える仕組み。
ACEの事業
ほっとひと息つきたい時に口にするチョコレート、お風呂あがりに使うふわふわのバスタオル。その原料となるカカオやコットンを作っているのは、実は子どもたち…かもしれません。彼らは、児童労働者として、過酷な環境の中長時間にわたって働くことを余儀なくされ、学校に行き、友達とともに学ぶ、遊ぶ、そんな子どもとしての当り前の権利が保障されていないのです。ACEは、「遊ぶ、学ぶ、笑う。そんなあたりまえを世界の子どもたちに。」をビジョンに掲げ、インドとガーナで子どもを危険な労働から守り教育を支援する現地プロジェクトの実施、日本で児童労働の問題を伝える啓発活動、政府や企業への提言活動、ネットワークやソーシャルビジネスを通じた問題解決の活動を行っています。
支援者ひとりひとりの情報管理が複雑になっていた。
Salesforceを導入する前のACEは、Microsoft Access(以下、アクセス)を使って支援者の基本情報や入金情報を管理していました。アクセスでの運用を始めてから数年は、特に大きな問題を感じることもなかったものの、次第に様々な課題を抱えるようになっていきました。例えば、アクセスの新しいバージョンが出ても、活動資金が限られている状況では、すぐに新バージョンに入れ替えることができない。アクセスがインストールされているパソコンでしか作業ができず、データの入力がなかなか進まない。アクセスに精通したスタッフが限られていて、変更したい部分があっても柔軟にカスタマイズができない。カスタマイズができないと業務に対応できないので、結局エクセルでデータを管理する。その結果、いくつものデータファイルがあちこちに散らばってしまい、どこにどんなデータがあるのか、スタッフ同士で共有できない…など。事業を大きくしたくても、管理が追い付かないというジレンマを抱えることになったのです。
先進的なNGOは「顧客(支援者)管理システム」を導入しているとわかった。
そんな折、代表の岩附さんが米国のNGOを視察。そこで、あるシステムの存在を知ったことがACEの転機につながります。視察先の団体では、誰がいつ、どこで、いくらの寄付をしてくれたのか等、支援者1人1人の情報がきちんと管理され、支援者の貢献度や興味関心に応じて、きめ細やかな対応ができるようになっていました。そのインフラとなっていたのが、顧客(支援者)管理システムだったのです。
ACEでも同じようなシステムを使えば、支援者を広げることができるはず!と確信した岩附さんは、帰国後動き出します。まず、外務省のNGO支援プログラムを活用し、ITに強いスタッフを確保。次にプロジェクトチームを立ち上げ、国内の他のNGOやNPOへのヒアリングにも行きました。そうして様々な情報収集と比較検討を重ねた結果、「非営利団体向けの無償プログラムがある」「バージョンアップやカスタマイズ作業が簡単にできる」「ホームページからデータを自動的に取り込む機能がある」「セキュリティが強化される」Salesforceに魅力を感じ、それまで使っていたアクセスからSalesforceへ完全に移行しました。
「寄付の申込みから領収書発行」まで一元管理を実現。
現在ACEでは、Salesforceの各機能を活用して、寄付の申込み~領収書発行まで、一連の情報や業務の状況をすべてSalesforceで管理しています。(1) 寄付の申込み受付
団体のホームページに申込みフォームを設け、寄付者が入力した情報が、自動的にSalesforceに取り込まれる仕組みになっており、入力の手間がかからなくなりました。
図1:左側がお申込みフォーム。右側がSalesforceの画面。
(2) 入金情報の登録
実際に寄付の入金があると、(1) で入力された情報に、入金日、金額、寄付の種類や受領方法などのデータを追加して登録します(図2)。
図2
(3) 領収書の発行
あらかじめ、Salesforceに領収書のテンプレートを登録しておき、(2) で登録された入金情報をもとに領収書を発行しています。Salesforceでは、自動的に名前や金額などが差し込むことができ、また印刷の履歴が残せるので、いつ領収書を印刷したのかがわかります。
図3:領収書
導入の効果・感想
ACEは、Salesforceを導入する前に、団体の課題をじっくりと洗出しました。そして、各課題に対して、Salesforceの各機能を有効的に活用できるよう、業務を設計し直しました。 ここで、導入前後で見られた変化をいくつかご紹介します。変化 その(1)
支援者のデータがアクセス以外にもExcelや紙データなど様々な形で蓄積され、それを担当者ごとに管理していたため、複数の担当者が同じ支援者の異なる情報を持っていて、どの情報が最新かわからなくなっていた。
≪導入後≫
Salesforceに支援者の情報が1つにまとまったことで、いつも最新の情報を参照することができるようになった。また、複数の担当者が同じ支援者と別々にやりとりした場合でも、Salesforce上に記録を残すことで、情報共有が容易になった。
変化 その(2)
アクセスに情報を入力する時は、すべて手入力で入力作業の負荷が大きかった。
≪導入後≫
団体のホームページから、支援者が入力してくれた情報を自動的にSalesforceに取り込めるようになり、入力作業の負荷は大きく軽減された。お問い合わせや申し込みに対して自動返信メールを送ることもできるので、初期対応のスピードが格段に速くなった。結果的に、より多くの支援者の方からの問合せや申し込みに、迅速に対応できるようになった。
変化 その(3)
アクセスのカスタマイズが難しく、新しいサービスや業務の導入、事業環境の変化に柔軟に対応できなかった。
≪導入後≫
簡単に新しい項目を作ったり、選択する値を追加できたりするので、「追加でこういう情報が欲しい」という場合もすぐに対応できる。
変化 その(4)
支援者が住んでいる地域や支援の種類など、支援者に応じたコミュニケーションをとることができていなかった。
≪導入後≫
Salefroceの一括メール送信機能を活用することで、地方のイベントについて特定の地域の人たちだけにご案内を送るなど、イベント情報やACEからのお知らせ、海外からのお便りなど、支援者に合わせた内容のメールをタイミングよく送ることができるようになった。メールへの返信で支援者の反応を知ることもでき、直接のコミュニケーションが取りやすくなった。
今後は、Salesforceに蓄積されたデータをさらに細かく分析、評価し、より戦略的に事業を行うこと、支援者を広げることにつなげていきたいと考えています。「遊ぶ、学ぶ、笑う。そんなあたりまえを世界の子どもたちに」届けることを目指して。
団体名 | 認定NPO法人 ACE |
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設立年月 | 2005年8月(1997年12月設立、2005年8月法人登記) |
組織規模 | 26,491千円(導入時:2008年度) 61,030千円 (2011年度) *支出・経常費用計 |
スタッフ数 | 7名(専従5、非専従2/導入時:2008年度) 10名(専従8、非専従2/2012年12月現在) |
ウェブサイト | http://acejapan.org/ |
事業内容 | 子どもの権利が保障され、すべての子どもが希望を持って安心して暮らせる社会を実現するために、市民と共に行動し、児童労働の撤廃と予防に取り組んでいます。 |